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東京地方裁判所 平成4年(ヲ)1037号 決定

主文

一  相手方は、引渡命令の執行までの間、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)に対する占有を解いて、これを執行官に引き渡し、保管させよ。

二  執行官に、引渡命令の執行までの間、本件建物を保管することを命じる。執行官は、その保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。

理由

一  申立人は、主文記載のとおりの決定を求め、その理由として次のとおり主張した。

(1)  申立人は、本件建物に対する当庁平成三年(ケ)第八六〇号不動産競売事件において、最高価買受申出(代金一億八一三七万円)をし、保証として金一八三三万二〇〇〇万円を提供した。

(2)  相手方は、差押の効力発生後である平成四年二月初旬以後、金融業者と思われるA産業株式会社の者を本件建物に入居させようとしている。

(3)  以上の相手方の行為は、申立人が代金納付をしても本件建物の引き渡しを困難にする行為である。よって、主文のとおりの裁判を求める。

二  よって、判断するに、一件記録によれば、次の事実が疎明される。

(1)  本件建物の抵当権者である総合ファイナンスサービス株式会社(以下「申立債権者」という。)は、平成三年六月五日、当裁判所に、抵当権に基づき競売の申立をし(当庁平成三年(ケ)第八六〇号)、同月六日競売開始決定が、同月七日差押の登記がそれぞれなされた。同年七月一五日執行官が現況調査に赴いたところ、本件建物は、所有者である相手方とその家族が居住して占有していた。

(2)  当裁判所は、平成三年八月二九日、本件建物につき最低売却価額を九一六六万円と定めたうえ、同年一一月二八日、入札期間を平成四月一月二九日から同年二月五日まで、売却決定期日を同月一九日として、期間入札の方法による売却実施命令を発した。申立人は、保証金一八三三万二〇〇〇円を金銭で納付したうえ、入札価額を一億八一三七万円として入札し、前記売却決定期日に売却を許可され、同決定は確定した。申立人は、平成四年三月一九日、保証金を控除した代金を完納した。

(3)  平成四年二月初旬ころ、相手方は、申立債権者に対し、「A産業というところから、『入り込んで居座る。』『賃貸借契約を結べ。』と言われている。」と言い、更に、同年二月一三日、相手方は申立債権者を訪れ、「明日、判を持ってA産業へ行く。」と述べたが、結局、賃貸借契約は結ばなかったとのことであった。

申立人は、上記の経緯・事情を申立債権者の担当者から聞き及んだ。A産業株式会社は、本件建物につき根抵当権設定仮登記(平成三年四月二日受付、極度額七〇〇万円)を有するものであり、相手方の言によると、同人はA産業から四〇〇万円を月利四割で借りているとのことであった。

(4)  平成四年三月一一日、申立人に、A産業のBと名乗る者から、「相手方から立ち退きについて依頼されているので、会いたい。」旨の電話連絡があった。平成四年三月一二日現在、本件建物には、相手方とその家族が居住している。

三 以上の事実によれば、相手方がA産業株式会社等の執行妨害を目的とする第三者を本件建物に入居させて本件建物の引き渡しを困難にする行為をするおそれがある。よって、申立人の本件申立は理由があるので、民事執行法七七条(一八八条)に基づき、主文のとおり決定する。

(裁判官松丸伸一郎)

別紙当事者目録

申立人 エフエイ企画株式会社

代表者代表取締役 古谷邦博

申立人代理人弁護士 小口恭道

相手方(所有者) 甲野太郎

別紙物件目録

(1)(一棟の建物の表示)

所在 世田谷区上野毛四丁目三九一番地一

建物の番号 上野毛コートハウスB棟

構造 鉄筋コンクリート造陸屋根

地下一階付三階建

床面積 一階 1976.99m2

二階 1946.31m2

三階 1946.31m2

地下一階 53.29m2

(敷地権の目的たる土地の表示)

1 所在及び地番 世田谷区上野毛四丁目三九一番一

地目 宅地

地積 5923.42m2

2 所在及び地番 世田谷区上野毛四丁目三九〇番一

地目 宅地

地積 3264.70m2

(専有部分の建物の表示)

家屋番号 上野毛四丁目三九一番一の一〇九

建物の番号 一〇九

種類 居宅

構造 鉄筋コンクリート造一階建

床面積 一階部分 87.78m2

(敷地権の表示)

1 敷地権の種類 所有権

敷地権の割合 九八七〇〇〇〇分の一四四五八一

2 敷地権の種類 所有権

敷地権の割合 五四四〇〇〇〇分の一六三〇〇

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